2023.07.05(2023.08.09更新)

業務効率化

医療のクラウド化とは?目的やメリット、おすすめのツールをわかりやすく解説

医療のクラウド化とは、医療関連のシステムやデータをクラウド上で保管および管理することをいいます。クラウド化すると情報共有が容易になり、コスト削減か可能になるなどのさまざまなメリットが得られるようになるのです。
この記事では、医療のクラウド化の目的やメリット、おすすめのツールについてわかりやすく解説します。医療のクラウド化を実現して医療現場での情報管理や業務効率化を目指したい方は、ぜひ、最後まで記事をご覧ください。

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医療のクラウド化とは

医療のクラウド化とは、医療関連のデータやシステムをインターネット上のクラウドサーバーに保存・管理することを指します。今までは病院内のローカルサーバーやコンピューター上にデータが保存されていたため、情報共有に時間を要していました。それをクラウド化することでデータへのアクセスが容易になり、工数の削減や作業効率向上が期待できるようになるのです。

そもそもクラウド化とは、インターネット上の大規模なサーバーネットワーク(クラウド)にシステムやデータを保存し、必要な時にインターネットを通じてアクセスできるようにすることを指します。

医療のクラウド化によって実現できることは以下のとおりです。

  • データの共有とアクセスの簡易化
  • リソース(データを保管できる容量など)の効率化
  • セキュリティとバックアップの強化
  • リモートアクセスなどによる診察環境の向上

医療のクラウド化は、効率性やデータの共有性、医療サービスの質および患者の利便性の向上にも役立ちます。ただし、セキュリティやプライバシーの保護、データの正確性や信頼性の確保などの課題があるので注意が必要です。

医療のクラウド化の目的

医療のクラウド化が求められる主な目的は、医療分野における業務の効率化です。地域の過疎化や医師の残業増加・医療のひっ迫などにより医療業界は業務改善が求められていますが、これらの解決の一助となっています。

また、医療をクラウド化すると僻地でもオンライン受診できるようになり、地域格差のない医療体制が期待できます。日中は忙しく診察が受けられない、在宅で医療を受けたいなど、多様化する要望にも対応可能です。

医療のクラウド化は、他にも次のような理由で対応が求められています。

  • 情報の一元化と連携の促進
  • 患者中心の医療の実現
  • 緊急時の迅速な対応
  • 運営コストの削減

今まで医療機関ごとに保管していた医療データをクラウドで一元化できるようになると、情報共有がスムーズになり、緊急時の患者への対応を迅速にできます。また、患者が別の病院に通うときでも、過去の受診データがその場で確認できるので、何度も説明する必要がありません。さらに、医療機関ごとにデータセンターやインフラを構築する必要がなくなるため、コストダウンも期待できます。

医療のクラウド化におけるガイドライン

医療のクラウド化におけるガイドラインとは、医療データや情報のクラウド化に関する基準やルールのことです。医療のクラウド化におけるガイドラインは、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と「3省4ガイドライン」に基づいて作成するべきでしょう。

それぞれのガイドラインについての詳細は次のとおりです。

【医療情報システムの安全管理に関するガイドライン】

  • 医療情報システムのセキュリティに関する基本的な事項をまとめた医療機関が遵守しなければならないガイドライン
  • 医療データのセキュリティとプライバシーの保護が目的
  • ガイドラインに含まれている項目は、情報セキュリティポリシーの策定と実施・セキュリティ対策の実施・セキュリティ監査など

【3省4ガイドライン】

  • 厚生労働省、経済産業省、総務省が共同で策定した、医療情報をクラウド上などに保管する際に遵守しなければならい項目が記載されたガイドライン
  • 医療情報の適切な管理と利活用を推進するために作成
  • 医療情報のプライバシー保護、情報セキュリティの確保、適切な利用と共有、利用者への情報提供を重視

これらのガイドラインは、医療のクラウド化において適切な手法やセキュリティ対策を示し、医療関係者やクラウドサービスプロバイダーが安全かつ適切な環境でデータを扱えるようにするための指針となっています。

医療現場でクラウド化されている主なサービス

医療現場でクラウド化されている主なサービスは、次のとおりです。

表は横にスクロールします

主なサービス 概要
電子カルテ 患者の医療情報を電子的に記録・管理する
画像管理 CTなどの医療機器が撮影した画像をデータベース化して管理する
オーダリングシステム 医療現場において検査や処置などのオーダー(指示)を電子的に行う
医療会計システム 診察やリハビリなどで生じた保険点数や医療費を計算し、医療サービスの請求や支払い処理を電子的に管理する
診察自動受付および予約システム 医療機関の診察予約を自動化し、患者が窓口や電話・インターネットを利用して予約をする
医療過誤防止・リスク管理システム 患者にバーコードつきのリストバンドを装着してもらい、投薬等の指示を専用端末に表示させて医療事故やミスを予防し、医療の安全性を向上させる
医薬情報担当者(MR)向けシステム 医薬品の情報提供や医師・薬剤師への正しい投薬の支援、営業活動の支援を目的としている

参考:情報のクラウド化は、医療業界のビジネスをどう変える?-NTTコムウェア

一覧にあげたシステムはどれもクラウド化が進んでいますが、まだ一部に留まっています。とはいえ、現在はどの業界もクラウド化が進んでいるため、医療のクラウド化もますます加速していくことでしょう。

たとえば、電子カルテや画像管理はクラウド化すると保管スペースの削減にもなり、患者の情報も検索してすぐに確認可能です。また、医療過誤防止・リスク管理システムや医薬情報担当者(MR)向けシステムは、ヒューマンエラーによる医療過誤防止も期待できます。

医療システムをクラウド化するメリット

医療システムをクラウド化するメリットは、主に4つです。

  1. 情報の共有がしやすくなる
  2. コストを削減できる
  3. 業務効率化につながる
  4. データの紛失・損失対策ができる

それぞれのメリットの詳細について、以下で詳しく説明します。

情報の共有がしやすくなる

今まで紙のカルテや手書きのメモで情報のやりとりをしていたものを電子データで行うことで、より簡単に必要な情報が共有できるようになります。たとえば、メモや口頭で情報のやりとりをしていると人為的なミスが生じる可能性が高くなります。しかし、医療のクラウド化により電子カルテの情報が共有できるようになると、誰もが同じデータを閲覧するため、誤った情報のやりとりが少なくなるのです。

その他にも、異なる診療科や病院間で情報を共有する場合でも、クラウド化されていると共有データをリアルタイムで見られるので、素早い情報のやりとりが可能になります。また、患者は今までの診察情報を他の病院に持参する手間が省けるため、利便性の向上にもつながります。

コストを削減できる

医療システムをクラウド化すると、サーバーやインフラの設備・管理が不要になるため、コスト削減が期待できます。システムのアップデートやメンテナンスも不要になるため、その分の人員コストも軽減可能です。

たとえば、病院内でサーバーを用意するとシステムの拡張や縮小が容易ではなく、余計な費用がかかってしまうケースも見られますが、クラウドは柔軟性が高く、拡張や縮小も容易にできます。これにより、余計なコストをかけずに状況に適したシステム管理が可能です。

ただし、現在の状況に適さないシステムを導入してしまうと、「使いたい機能がない」「機能を使いこなせない」といった理由からシステム入れ替えなどの余計なコストがかかる場合があります。

現在の状況やコストに見合うものか把握したうえで導入を検討しましょう。

業務効率化につながる

医療システムをクラウド化することで業務効率化も期待できます。クラウド化によってデータを自動的に処理したり、ペーパーレス化が促進されて印刷の手間が省けたりするためです。

たとえば、クラウド化により次のようなメリットが考えられます。

  • データの自動化と統合により煩雑な作業や手入力のミスを軽減できる
  • タスクの流れや手順を自動化することにより作業フローの効率化が期待できる
  • クラウド上のデータを患者の診療方針などに活用できる

業務効率化が実現すれば、医療過誤などのミスの防止にもつながります。また、今まで作業に割いていた人員を他の業務に充てられるため、各医療従事者の負担も軽減できるでしょう。

データの紛失・損失対策ができる

医療システムをクラウド化すると、データの紛失や損失対策もできるようになります。クラウド上にデータを保管することでセキュリティ対策や災害対策にもなるためです。

クラウド上にある医療データはサービス提供会社のセキュリティシステムで保護されるため、不正アクセスや情報漏えいのリスクを下げられます。さらに、アクセス制御もできるので、関係者による情報漏えいからも重要なデータを守ることが可能です。また、自然災害などでデータが損失する可能性も低く抑えられます。

ただし、バックアップは定期的に実施しましょう。何らかの理由でデータが損失した場合でも、バックアップからデータを復旧可能です。この際、データのバックアップも自動化できるようになります。

医療システムをクラウド化するデメリット

医療システムをクラウド化するとさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットも考えられます。デメリットとして起こりうるリスクを一覧にまとめたので、確認してみましょう。

表は横にスクロールします

想定されるリスク 対応策
クラウドシステムはインターネット接続が必要なため、接続に問題が生じるとシステムへのアクセスが制限される可能性がある 信頼性が高いインターネットサービスプロバイダーと契約する
クラウド上にデータを保存することにより、第三者がデータにアクセスするリスクが生じる可能性がある セキュリティ強化やプライバシー保護に努める
クラウドシステムは一般的なサービスとして提供されるため、機能やワークフローのカスタマイズが制限される可能性がある カスタマイズが可能なサービス提供会社を選択し、必要に応じてカスタマイズを行う
クラウド化により提供されるサービスを利用することになるので、運用コストがかかる 複数のサービスを比較して、コストが見合うものを利用する

このように、医療システムをクラウド化するためにはいくつかのデメリットがあるため、現在の状況を把握したうえで検討するべきでしょう。また、クラウド化する際は複数のサービスを比較して、それぞれ見積もりを出してもらうことをおすすめします。

医療のクラウド化におすすめのツール

医療システムにはさまざまなものがありますが、その中でもおすすめのツールを5つ紹介します。それぞれ特徴があるので、現在の状況を把握したうえで目的に合ったものを導入しましょう。

Stock

Stock


引用元:Stock

Stockは、データの共有と連携をサポートし、チーム間のコミュニケーションと効率的な情報共有に特化したビジネスツールです。インターフェースも非常にシンプルなため、慌ただしい医療現場でも直感的に操作できます。情報もチャットツールのように流れていかないため、必要なものを必要な時に閲覧可能です。

また、Stockは高いセキュリティを誇り、データは厳格なセキュリティ体制の元で保護されています。また、アクセス権限の設定も可能なため、履歴が勝手に編集・削除されることも防止できるようになります。

Stockには30日間の無料トライアルがありますので、興味がある方は試してみてはいかがでしょうか。

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MMed Cloud


引用元:MSYS医療クラウド MMedCloud

MMedCloudは、医療情報や画像データなどの保管や管理をワンストップで行える医療クラウドサービスです。ユーザーのニーズや仕様にあわせてカスタマイズ可能なシステムを提供しているので、無駄なくシステムを利用できます。

MMedCloudは最新のデータセンターで管理・運用されているためセキュリティ面でも高い基準を満たしています。たとえば、最新の免震構造の建物内にデータセンターはあるので、巨大地震が発生したときでもデータの損失リスクを抑える効果が期待できるのです。また、クラウド型医療ICTシステムインフラも充実しているため、医療情報や画像データを安全かつ低コストでやりとりが可能になります。

医療システムをワンストップで効率よく、状況に応じてカスタマイズしたい方は、MMedCloudの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

CLINICS


引用元:CLINICS

CLINICSは、医療現場におけるクラウドベースの統合型医療情報システムです。CLINICSは、電子カルテ・オンライン診療・経営分析などのそれぞれ独立した業務をすべて内包し、一貫性ある操作ができます。また、高いセキュリティ対策を実施しているのもCLINICSの特徴の1つです。たとえば、データは日本国内のクラウドサービス上に保管し、バックアップも6時間ごとに取得しています。大きなインシデントが発生した際にも48時間以内にユーザーに通知するなど、安心してサービスを利用できるように取り組んでいます。

セキュリティを強化しながら効率よく医療クラウドを利用したい方にCLINICSはおすすめです。

SymView


引用元: SymView

SymViewは、かかりつけ医の診療DXを促進するために開発されたツールです。電子カルテや予約システム、オンライン診療システムなどと連携可能で、患者の問診内容も簡単に電子カルテに反映できます。また、患者が来院前に詳細な症状を確認できるので、待ち時間の短縮や感染症対策も可能です。さらに、医療マーケティングツールとして患者ニーズの把握やLINEの友達登録の促進などにも活用できます。

業務改善をしつつ、マーケティング施策も効率よく行いたい場合にSymviewはおすすめです。

エムスリーデジカル


引用元:エムスリーデジカル

エムスリーデジカルは、自動学習機能により入力時間を大幅に削減可能なAI搭載型の電子カルテです。iPadを利用すると手書き感覚の入力ができるので、パソコン操作が苦手な方でも直感的に操作可能です。また、モバイルにも対応しているので、訪問診療前にカルテを確認したり、外出中に気になることをメモに記入したりできます。90以上のサービスや機器とも連携可能なため、エムスリーデジカルを導入することで、幅広い管理や運用が可能になるでしょう。

AIを導入して診療を効率よく行いたい方に、エムスリーデジカルはおすすめです。

医療システムをクラウド化する際の注意点

医療システムをクラウド化する際には、高いレベルのセキュリティ対策が必要になります。なぜなら、医療データは機密情報であり、不正アクセスなどにより漏えいした場合は多大な被害が発生する可能性があるためです。

医療システムのセキュリティ対策には、MDM( Mobile Device Management)を導入するとよいでしょう。MDMとは、ビジネスで使用するスマホなどのモバイル端末を監視および一元管理するツールのことです。

医療現場でのMDM活用例として、次のようなものが挙げられます。

  • 電子カルテのシステムを使用しているタブレットなどの端末をホワイトリストに登録し、リスト以外の端末に勝手にインストールされたり、誤って削除されたりしないように管理する
  • 業務に使用している端末に遠隔操作でアプリの配信やアップデートを行い、業務効率化を図る
  • 業務で使用している端末が接続できるWi-Fiを制限して情報漏えいなどのセキュリティリスクを軽減する

なお、MDMの詳細を知りたい方は、下記の記事もあわせてご参照ください。
関連記事:
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まとめ

医療のクラウド化とは、医療関連のデータやシステムをインターネット上のクラウドで保管・管理することです。医療のクラウド化の目的は、主に業務効率化にあります。地域の医療格差や医師や看護師の不足、医療のひっ迫など医療現場は様々な課題を抱えているため、効率よく業務を進めることが求められているのです。

医療をクラウド化するにあたって、状況に適したツールを活用するとよいでしょう。クラウド化にはモバイル端末の使用が欠かせないため、MDMもあわせて活用するとより効率的に作業できます。

クラウド化のためのツールはさまざまなものがあるので、複数のサービスを比較して、院内の状況や目的に適したものを選びましょう。

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