2022.12.28

DX

DX化とIT化・デジタル化の違いとは?注目される理由や取り組み例も紹介

経済産業省から急速に対応が必要な課題として挙げられている「DX」ですが、そもそもDXとは何なのか、どうして取り組まなければいけないのか、よくわかっていないという方もいるでしょう。この記事ではDXについて解説し、部門別の取り組み例なども紹介していきます。実際にDX推進に取り組んでいる方や、これから取り組もうという方はぜひ最後までご覧ください。

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語です。なぜDTと略さないのか疑問に思う方もいると思いますが、英語では接頭辞である「Trans」を「X」と省略することがあるため、DXと略されています。

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」は日本語にすると「デジタル革新」や「デジタル変換」という意味で、経済産業省が公開しているガイドラインでは以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用:経済産業省「デジタルガバナンス・コード」

DXは業務のデジタル化などと勘違いされることが多いですが、上記のように「デジタル技術を活用して、ビジネスモデルの変革を起こす活動」のことを指します。またビジネスシーンで「DX化」という表現が使われることもありますが、DX化は「DXに成功して、変革した状態を表す造語」です。「DXを進める」という意味合いの場合は、そもそもDXの中に「変革」という意味も含まれているため「化」をつける必要はありません。混同されがちなので、注意して使い分けましょう。

DXを実現するにあたっては、以下の3つのステップを踏む必要があるとされています。

  1. デジタイゼーション(Digitization)
    アナログの情報をデジタルデータに変換することを指します。
  2. デジタライゼーション(Digitalization)
    業務や作業そのものをデジタル化することを指します。
  3. デジタルトランスフォーメーション(DX)

ただし、これらのステップは必ずしもこの順番で行う必要はなく、例えばDXから着手するなど順不同に取り組めることが特徴です。DXは「デジタル技術を活用して、ビジネスモデルの変革を起こす活動」であり、デジタル化を行うことがゴールではありません。デジタル化や活用により既存のビジネスモデルを変革すること、新たなビジネスを創出することが目的です。そのため、下図のようにデジタル化~最適化まで変革に繋がる取り組みが必要となってくるのです。

IT化との違い

ITは「Information Technology(インフォメーションテクノロジー)」の略語で、コンピューターとネットワーク技術の総称です。IT化は「アナログ業務をデジタル化して便利にする」という意味合いで使われるようになりました。そのため、既存の業務プロセスに対する効率化や生産性向上など、限定的な部分を指す言葉です。

それに対してDXは「ビジネスモデルの変革を起こす活動」であり、社会や組織・ビジネスの仕組みそのものの広い範囲を指します。こういった点が「IT化」と「DX」では異なり、IT化はDX実現のための1つの手段といえるでしょう。

デジタル化との違い

デジタル化は「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは」の項目で説明した「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Digitalization)」を日本語に訳した言葉です。

先の項目で「DXを実現するには以下で説明する3つのステップを踏む必要がある」と説明しているように、デジタル化はDX推進に伴う「業務のデジタル化」という手段のことを指しています。

IoTとの違い

IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されています。IoTはあらゆるモノをインターネット・ネットワークに接続する技術のことで、ネットワークを通じて相互に情報交換を行い、情報処理・分析・連携などを行い便利に活用することが目的です。

DXは「ビジネスモデルの変革を起こす活動」であり、IoTはデジタル技術を活用した仕組みのことを指します。そのため、IoTはIT化・デジタル化と同じようにDX実現のための1つの手段といえます。

DXが注目されている理由

近年DXが注目されるようになった理由として、以下の2つがあげられます。

  • 2025年の崖に備えるため
  • 新型コロナウイルスが感染拡大したため

以下の項目で、それぞれについて解説していきます。

2025年の崖に備えるため

「2025年の崖」とは、経済産業省が「DXレポート」にて提示した日本経済の将来についての警告です。2025年の崖では「この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性」 があると記載されています。

「2025年の崖」では以下のような問題が提示されており、これらは多くの日本企業が抱えている課題でもあります。

  • 既存のITシステムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化
    多くの企業では、既存のITシステムの老朽化により非効率なものになっています。またシステムを長年使用したことにより「誰も内容が把握できていない」「内容が整理されていない」など、複雑化・ブラックボックス化。それによりデータ連携がスムーズに行えない、新たなシステム移行が行えないなど、様々な問題を生み出しています。
  • IT人材・エンジニア不足の激化
    既存システムの大規模開発を行った人材が定年退職を迎えてしまい、社内で知識のある人物がいなくなり、さらにシステムがブラックボックス化。旧システムに対応できるエンジニアが足りない、旧システムを活かしきれないという問題が起こっています。

旧システムの維持には費用がかさみます。さらにシステム維持により新たなITシステムへ投資が行えない、人材を割けないという負の連鎖も起こりえます。市場のデジタル化が避けられない昨今、このような状態では企業の競争力が失われてしまうでしょう。その結果、2025年頃に最大12兆円の経済損失が起こるとされているのです。

「DXレポート」の内容は企業に衝撃を与え、2025年の崖に備える必要があると考えた多くの企業がDX推進を進めるようになりました。

新型コロナウイルスが感染拡大したため

新型コロナウイルスが感染拡大したことにより、「新しい生活様式」に対応する必要が生まれました。日本では今まで働き方の柔軟化・多様化が進んでいないという現状でしたが、テレワークの必要性が高まったため、急速にデジタル化・電子化が進んでいます。その中でDXの遅れが認知されたことにより、多くの企業でデジタル技術の活用や業務方法の見直しが行われるようになったのです。

また、緊急経済対策として行われた「特別定額給付金」ではアナログ作業に頼る部分が多く、給付までに多くの時間を要したことは知られています。そこで行政のDXが遅れていることが認知され、国民の間でもサービスの向上にはDX推進が必要であると考えられるようになりました。

DXを推進するメリット

実際にDXを推進した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

こちらではDX推進を行うメリットを3つ紹介します。

  • 業務効率が向上する
  • BCP対策を充実させられる
  • 新規ビジネスを創出できる

業務効率が向上する

DXではデジタル技術を積極的に活用します。アナログで行っていた作業がデジタル化されことにより工数が減ったり、ヒューマンエラーをなくすことができたりなど、業務を効率的にこなせるようになります。

また、DX推進によってデジタル化するだけではなく、プロセス自体を見直すことができます。プロセスそのものを効率化することによって組織をより合理的な業務内容へ改善できるため、生産性の向上も期待ができます。

BCP対策を充実させられる

BCPとはBusiness Continuity Planningの略で、災害などの緊急事態における企業・団体の事業継続計画のことです。BCPは自然災害・大火災・テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限にとどめつつ、事業の継続や早期復旧を図ることを目的としています。

DXを推進することにより、テレワークなどの多様な働き方に対応できることが見込めます。遠隔でも作業可能な環境が整っていると、災害時などでも業務が停止するリスクを回避しやすくなるのです。

新規ビジネスを創出できる

DXを推進することにより、デジタルテクノロジーを駆使した最新のビジネスモデルを検討できるようになります。これまで行うことができなかった取り組みでも、新たなシステムなどを利用することで事業の幅を広げることができるでしょう。

また、システムの効率化によりこれまで以上に顧客情報の収集・分析・解析も可能になることが見込まれます。それによって新たなニーズを発見することができ、新しい商品・サービス・取り組みに繋げられる可能性も高まるのです。

【部門別】DXの取り組み例

実際にDXを推進していくにあたって、どのようなことに取り組めばよいかイメージがつかない方もいるのではないでしょうか。こちらでは部門別にDXの取り組み例を挙げ、解説していきます。

管理部門

少子高齢化などの問題から、今後はより人手不足になることが懸念されています。そのため、アナログ作業が多く発生していた管理部門では人手不足をカバーするため、より「業務の効率化」が必要です。

管理部門の生産性をあげるためには、以下のようなDXの取り組み例が挙げられます。

  • 契約書・発注書・請求書などのペーパーレス化
  • 契約書管理システムの導入
  • 電子承認システムの導入
  • 社内利用システムの統一化
  • チャットシステム・オンラインミーティングシステムの導入

管理部門では、他部門との連携や密な連絡が必要です。社内利用システムの統一化を行うことで、連絡の管理や情報の管理を全社で効率的に行うことができます。また、チャットシステム・オンラインミーティングシステムを導入することで遠隔地でも連絡が取りやすくなるため、テレワーク時のコミュニケーションの質を向上させることができます。

ペーパーレス化や契約管理システムの導入については、管理部門で取り扱う膨大な文書をデータで管理できるようになるため、作業の効率化が見込めます。さらに電子契約管理システムを組み合わせれば、作成から締結までの手続きを電子管理できるようになるため、契約書業務を大幅に効率化することが可能です。

また書面を取り扱うことが多い管理部門ですが、ペーパーレス化や電子化を進めることでリモートワークへの対応も進めることができます。

上記の中では、社内だけで変更を完結することができる「社内システムの統一化」や「チャットシステム・オンラインミーティングシステムの導入」が取り組みやすいのではないでしょうか。

営業部門

これまでは直接訪問することが主流だった営業も、新型コロナウイルスの流行により大きく形を変えています。またインターネットの普及やデジタル化の流れから、活用されるツールも大きく変わってきました。

時代の流れに大きく左右される営業部門では、以下のようなDXの取り組み例が挙げられます。

  • 営業活動や顧客情報のデータ管理
  • オンラインツールを用いた営業活動
  • ツールによる顧客分析

営業活動や顧客情報のデータ管理を行うことで、部門内での情報共有や管理が容易になります。また担当引継ぎなどを行う場合にも共有がしやすく、効率よく行うことができるでしょう。

新型コロナウイルスの影響により既に導入されている企業も多くありますが、オンラインツールを用いた営業も有効です。直接訪問に比べて時間を短縮することができるため、それにより効率よく営業活動を行うことができます。

取り組むにはコストや時間を要しますが、DX推進を行うことでツールによるより詳細な顧客分析を行うことが可能です。それにより、これまで見えなかった顧客ニーズの発見や営業の方針を定めるのに役立てることができ、より社会のニーズに合った営業を行うことができるでしょう。

上記の中では、部署内で完結できる「営業活動や顧客情報のデータ管理」が取り組みやすいといえます。また、オンラインツールでの営業に理解のある企業も増えているので、取引先によってはすぐに取り入れることができるのではないでしょうか。

経理部門

経理部門は専門性の高い分野のため「なり手不足」が進み、人材の確保が難しくなることが懸念されています。そのため、DX推進により業務の制度を保ちつつ、作業の効率化を進めることが求められるのです。さらには「改正電子帳簿保存法」や「インボイス制度」により、経理部門への不可の増大が予想されています。

人手不足の中、複雑化していく経理業務をこなしていくためには、以下のようなDXの取り組み例が挙げられます。

  • 契約書・発注書・請求書などのペーパーレス化
  • 契約書管理システムの導入
  • ワークフローシステムの導入
  • 経理業務における各種システムの導入
  • 自動化ツールの導入

経理業務では紙面を取り扱うことが多いため、手作業で行う業務が多い傾向にあります。ペーパーレス化や各種システムの導入を行うことにより、アナログ業務をデジタル化することができるため、業務の効率化を図ることができるでしょう。また、コストや時間を要しますが「自動化ツール」などを利用すれば、手作業をロボットに代替することができ、処理速度の向上やヒューマンエラーを無くすこともできます。

さらに、ペーパーレス化やシステムの導入により電子化を進めれば、アナログ作業が多い経理部門でもテレワークに対応することができるようになります。業務の性質上、経理部門のDX推進はすぐに取り組むのが難しいものが多いです。社内でよく検討し、全社的に取り組んでいくのがよいでしょう。

人事部門

先の項目で説明したように、DXは「デジタル技術を活用して、ビジネスモデルの変革を起こす活動」のことを指します。そのため、DX推進が進められている昨今は、より人材確保に重きを置かれているのです。自社の経営戦略に沿った人材を探し、競争力維持・強化のために迅速な対応が人事部門では以下のようなDXの取り組み例が挙げられます。

  • 人事情報のペーパーレス化
  • 経理業務における各種システムの導入

人事部門では応募者や自社の従業員情報など、膨大な情報を管理しています。そのため、紙面やExcelでの情報管理は効率が悪く、業務に割く時間も多くなりがちです。情報のペーパーレス化を進めれば管理する手間が省けるため、効率よく業務を行うことができるでしょう。

また人事部門は、給与計算・労務管理・人事評価・採用業務などさまざまな業務を担当しています。他部門に比べてシステム化できる業務が多いため、導入しやすい環境にあるのが特徴です。例えば、従業員の勤務状況を管理するための「勤怠管理システム」などが挙げられるでしょう。細かな作業をシステム化することでヒューマンエラーや作業時間の短縮になるため、生産性の向上につながります。

人材情報管理・採用情報管理などをデジタル化することは、最適な部署への人材配置を行い、働きやすい環境をつくることに繋がります。システム導入はコストや時間がかかるため、すぐに効果を出すのは難しい場合もありますが、よく検討してDX推進を進めていくのがよいでしょう。

総務部門

総務部門は他部門とのやり取りが多く、毎日多くの質問や問い合わせが来ます。また、細かな作業が発生することが多くアナログでの作業が多いため、デジタル化には向かない部門と思われがちでした。しかし新型コロナウイルスの流行によりテレワークの普及が必要となり、総務部門のデジタル化が見直されています。

社員が一堂に集まる機会の少なくなった今、総務部門では以下のようなDXの取り組み例が挙げられます。

  • 社員からの問い合わせのオンライン化
  • チャットシステム・オンラインミーティングシステムの導入
  • 電子承認システムの導入
  • クラウド郵便管理サービスの導入
  • 自動化ツールの導入

問い合わせが多い総務部門では、テレワークの普及に応じてオンラインでの対応が求められます。メールや電話での問い合わせだけでなく、オンラインツールを利用した問い合わせ対応を行うことで、より効率的に業務をこなすことができます。またチャットシステムを導入することで、個々の連絡だけでなくチームでの連絡を取ることができるようになります。情報共有が容易になり、生産性の向上が期待できるでしょう。

社内での承認や郵便の対応が必要になるため、総務部門では出社して行う業務が当たり前なところがありました。ですが、電子承認システムやクラウド郵便管理サービスを導入することで遠隔からの業務も可能になります。

事務作業やバックオフィス業務が多い総務部門では、細かな作業が多く発生します。そのため、手作業をロボットに代替することができる「自動化ツールの導入」が非常に効果的です。作業時間を短縮できるほか、手作業で発生するヒューマンエラーをなくすことができるため、生産性向上に繋がります。

各種システムの導入にはコストがかかるものの、チャットシステムやオンラインミーティングシステムの導入は幅広く多種多様なツールが提供されているため、取り入れやすいです。システムを利用して社員からの問い合わせを受けることもできるため、導入によって他業務にも利用できるでしょう。

企業でDXを推進するポイント

企業でDXを推進していくにあたり、気を付けるべきポイントとはなんでしょうか。

こちらでは以下の2つのポイントについて説明していきます。

  • 会社全体で取り組む
  • IT人材を確保する

会社全体で取り組む

企業でDXを推進していく場合、会社全体で取り組まなければ意味がありません。経営層が必要だと感じてDXを進めたとして、実際に業務上で影響を受けるのは従業員です。また、実際に利用する従業員の理解がなければ取り入れたものも定着していきません。DXで取り入れる内容が現場や従業員の求める改善でなければ、上層部の押しつけとなってしまいます。

そうならないために組織内の風通しを良くして、上層部が現場のやりたいことを汲み上げ、現場も上層部のやりたいことを理解するという密なコミュニケーションが必要になります。全社員が「DX推進が必要なこと」と理解し自分事と捉えていれば、DX推進は成功していきます。

DX人材を確保する

DX推進にはITやテクノロジーに関する知識が必要です。そのため、企業でDX推進を行う場合にはDX人材を確保する必要があります。DX人材にはITの知識だけではなく、ビジネス的視点や経営目線が必要とされます。DXは「デジタル技術を活用して、ビジネスモデルの変革を起こす活動」であるため、ITツールの導入を行って終わりというものではありません。最終的にはビジネスモデルの変革指せる必要があるため、経営層と同じ目線で物事に取り組む姿勢が求められるのです。

2025年の崖を目前とし、DX人材を確保するのは難しくなっています。採用するには粘り強く採用活動を行うことが重要です。どの会社からも求められる人材を採用するためには、DX人材にとって働きやすい環境を整える必要があります。市場価値に沿った報酬の準備や、テレワークやフレックスといった働き方の整備など「働きたい」と感じる環境づくりに取り組むことも重要です。

また、DX人材を社内で育成するという方法もあります。DX推進に必要な人物像を明確にし、研修を行って育成します。育成のコストや時間はかかりますが、自社の事業内容や組織体制を理解した社員によってDX推進に取り組むことができるのは大きなメリットです。

まとめ

デジタル化の時代の流れや2025年の崖に備え、DX推進は多くの企業で取り組まれる課題となりました。ビジネスモデルの変革を目的としたDXは、取り組んですぐに結果が出るものではありません。会社全体で理解を持って取り組み、長期で解決していく目線が大切です。

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