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BYODとは|導入の注意点って?企業と学校、それぞれのメリット・デメリットも解説
(2023年5月29日 更新)
新型コロナウイルスの影響が長期化していく中「BYOD」という言葉を目にしたことはないでしょうか。おもに、テレワークを行う企業を中心に活用されてきた「BYOD」ですが、企業はもちろんのこと、学校・教育分野においても広まりを見せつつあります。
そこで今回は、テレワークや業務効率化に課題を抱える企業の方はもちろん、学校・教育分野においてBYODを取り入れておきたいという方にも、知っておきたい「BYOD」のメリット・デメリットと、注意すべき点までしっかりと解説していきたいと思います。
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BYOD(Bring Your Own Device)とは?
BYODとは「Bring Your Own Device」の略称で、従業員が個人で所有しているパソコン・タブレット・スマートフォンなどを業務上でも使用することを言います。ここでは、企業・教育分野それぞれにおいて具体的にどういった使用方法になるかを個別に見ていきましょう。
企業における「BYOD」
企業におけるBYODとは、前述した通りに従業員が個人で所有するパソコンやタブレットといったデバイスを業務においても使用するといった方法となります。
最近では、業務上ではクラウドサービスを利用することが多く、会社所有の端末でしか業務ができないといったケースは少なくなってきています。こうした端末を問わずに業務が可能となりつつある状況も、BYODが取り入れやすくなってきている理由の一つだとも言えるでしょう。
新型コロナウイルスの影響から急務とされているテレワーク推進の動きから、改めて企業内でもBYODについて検討しているところも増えつつあると言えます。
後述しますが、BYODを利用することで、テレワークのためのデバイスを別途購入する必要がなくなるため、急いでテレワークに取り組みたいといった場合にも迅速な対応が可能となります。
教育現場における「BYOD」
学校・教育分野におけるBYODでは、教員の私用デバイスを業務に活用したり、児童・生徒が個人で所有するタブレット等のデバイスを授業に利用するといった方法が取られています。
とくに、新型コロナウイルスの影響から出校できないといった状況においても、児童・生徒の所有する端末を活用するBYODを進めることで、”学びを止めない”体制を維持することが可能となります。長期化する新型コロナウイルスの影響を鑑みても、教育分野におけるBYODの活用は必要性がより求められている状況だと言えます。
なお、新型コロナウイルスの流行が見られる以前にも、教育現場におけるBYODを進める動きは取られていました。2018年より東京都では「都立学校スマートスクール構想の実証研究」としてBYOD研究指定校をいくつか指定し、実際の現場でBYODに取り組んでいます。
企業における「BYOD」のメリット
ここからは、BYODを導入することのメリットについて詳しく解説していきたいと思います。
まず、企業におけるBYODのメリットは、大きく分けて以下の3点となります。もちろん注意すべき点もありますので、導入を検討している企業の方は注意点もしっかりチェックしてみてください。
端末購入の初期費用の削減に
BYODでは、従業員が個人で所有する端末を利用しますので、当然ながら端末の購入費は企業負担のものとはなりません。また、非常時などに急遽テレワークを行わなければならないといった状況下においても、BYODが可能な状態であればスムーズなテレワーク稼働も実現します。端末購入を従業員の数だけ行えばそれだけ費用も大きくなりますので、こうした初期費用の削減は企業側としては、大きなメリットの一つだと言えます。
ただし注意しておきたいのは、従業員が使用しているパソコンが故障した場合などは、BYODによる業務は停止せざるを得ないということです。端末を従業員が再購入するとしても購入から利用までに時間がかかることもあります。こうした事態もあらかじめ想定しておき、その場合にはどういった対応をするかなどは、あらかじめ企業と従業員の間でしっかりとルール決めをしておく必要があるでしょう。
従業員が自分の好きな端末を利用できる
企業が従業員にパソコンなどを使用させる場合は、全員に一律で同じメーカー、同じスペックのパソコンを購入するといったことが一般的です。パフォーマンスの最大化を考えるのであれば、従業員一人ひとりの要望に合致したパソコンや端末を提供できれば良いですが、なかなか難しいというのも実情ではあるでしょう。
BYODであれば、従業員は好きな端末を利用することができます。さらに、従業員は使い慣れた端末を利用できるため、企業側の初期教育といった負担もありません。こうした点も、BYODのメリットとして挙げられます。
シャドーITの抑止
従業員が会社の許可を得ることなく、外部サービスや私用端末を使って業務を行うことを「シャドーIT」と呼びます。こうしたシャドーITは会社の管理外となるため、万が一の情報漏えいなどの対策を講じづらく、セキュリティ面のリスクにも繋がってきます。
しかし、あらかじめルールを決めて運用をするBYODであれば、シャドーITの抑止が可能となります。
シャドーITについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください!
≫シャドーITを事例つきで解説!企業のリスクや対策方法もチェック
企業における「BYOD」のデメリット
BYODのメリットについて見ていきましたが、デメリットとなる部分ももちろんあります。企業における「BYOD」導入のデメリットから見ていきましょう。
セキュリティリスクは高くなる
BYODでは、個人の端末を利用するために、使用場所やネットワークが特定の場所に限られません。また、業務使用中には問題がない場合でも、私的な利用を行っている際に端末が不正アクセスの被害に遭うといったことも想定できるでしょう。
さらに、個人の端末を紛失した場合には情報漏えいといった危険性も高まります。こうしたことを踏まえると、BYODのセキュリティリスクは決して低くないものだと考えたほうが良いでしょう。
運用ルールの策定と徹底が求められる
BYODを実施する場合に、単純に私用端末の利用を許可するだけでは、上記のようなセキュリティリスクが高まります。こうしたリスクを防ぐためにも、企業側でしっかりと運用ルールを策定する必要があると言えるでしょう。
もちろん、定めたルールを従業員に徹底させることも重要です。通常の社用端末を利用させるのと比較して、BYOD導入に際しこうした時間や考慮が必要な点はデメリットだと言えます。
従業員の公私の線引きがあいまいに
BYODのデメリットとして、私用端末であるがゆえに、公私の線引きがあいまいになるという点があります。たとえば業務時間が長くなってしまう、業務時間外の労働を誘発してしまうといったことが起きやすいようです。こうした事態が起きると、労務管理の問題にも繋がってきますので注意が必要です。
また、従業員のプライバシー保護の観点からも、公私の線引きをしっかり行う必要もあるでしょう。
企業における「BYOD」の実態・実施状況
では企業において「BYOD」の実施状況はどうなのでしょうか。利用状況やリスクに対する声、実際にあったトラブル例などを見ていきましょう。
企業全体の40%程度がBYODを禁止している
2023年に実施されたアンケートによると、勤務先でBYOD利用が明確に禁止されている、またはBYODの利用はないと答えたのは全体の40%程度でした。とはいえ、残りの60%程度のすべてがBYODを認可しているかといえばそうではなく、「全社や限定部署で推奨している」と答えた企業は20%程度にとどまっています。
セキュリティリスクを懸念する声は大きい
BYODを禁止、または推奨しない理由としては、セキュリティリスクを懸念する声が大きいようです。端末の紛失や、社員の家族など第三者が端末を使う可能性など、懸念は尽きません。ほかにも、マルウェアや不正利用など悪意のある攻撃に対してBYODで対処できるのか、といった心配もあるでしょう。企業の情報をセキュリティが担保できない端末で扱うことのリスクや、情報を持ち出すことによるリスクを解決できない限り、導入を見合わせる企業は少なくありません。
また従業員からは、個人所有の端末を監視されることへの懸念や、公私の区別がつかなくなり業務時間の拡大に繋がるのではないか、といったことを危惧する声も上がっています。メリットとデメリットを天秤にかけた結果、導入に踏み切れない企業は多いようです。
BYODによるセキュリティトラブルの例
BYODによって業務の利便性は向上するものの、セキュリティリスクを想定していないと、思わぬトラブルに見舞われることもあります。例えば、個人のスマホを業務利用していた従業員がスマホを紛失し、そこから業務に関する情報が漏えいしたという事例があります。また、BYOD端末が不正アクセスなどのトラブルに見舞われた際には、企業から該当端末の提出を求められるケースがあります。その際、プライベートな情報を見られたくないばかりに提出を渋り、責任の所在を巡ってトラブルになるケースもあるのです。
一方でBYODを認めない企業では、会社が把握していない端末、通称「シャドーIT」の業務利用が増え、さらにセキュリティリスクが高くなってしまうケースも存在します。BYODを認める・認めないにかかわらず、企業内でガイドラインや規定をしっかりと設ける必要があるでしょう。
学校・教育分野における「BYOD」のメリット
つづいて、学校・教育分野におけるBYODのメリットを見ていきましょう。企業におけるメリットと共通する点もありますが、教育現場ならではというものもあります。
低コストで導入できる
こちらは企業におけるメリットでも取り上げましたが、BYODであれば必要となる端末を購入する必要がありません。教育現場においてはGIGAスクール構想の活用から、1人1台の端末配布が進められているとは思いますが、実際は新型コロナウイルスの影響からタブレットの受取に時間がかかってしまったり、また教員用のタブレットの用意がないといった問題もあったのではないでしょうか。
こうした場面においても、BYODであれば端末準備の必要がありませんので、低コストでの導入が可能となります。
ICT教育の推進に役立つ
学校・教育分野におけるBYODでは、インターネットや動画、学習アプリの活用といった、これまでの対面型の授業とは違ったやり方で、児童・生徒に学びを与えていくことができます。また、自宅学習にも役立ちますので、非常時においても学びを止めない取り組みが可能となるでしょう。ICT教育の推進がより強く叫ばれる中、BYODを取り入れておくことは大きなメリットです。
▼学校・教育現場で活用できる学習ツールを知りたい方は、以下の記事も併せてチェック!
≫Google Classroomでできることって?使い方や機能、始め方の手順まで紹介!
学校・教育分野における「BYOD」のデメリット
学校・教育分野におけるBYODのデメリットも、セキュリティ面や公私の線引きといった点が挙げられます。
セキュリティ面や紛失・破損の対応
企業におけるデメリットでも挙げましたが、BYODは場所を問わず利用できますので、ネットワーク等のセキュリティリスクが高くなります。生徒・児童がプライベートでインストールしたアプリなどから学校のシステムへの不正アクセスが起きるといった可能性も考えられますので、セキュリティ対策には注意が必要です。
また、個人が使用する端末においては、紛失や破損といったリスクも常に隣り合わせです。紛失時における情報漏えいに対する事前の対策なども、しっかりと準備しておかなければなりません。
また、端末が破損してしまった場合にはBYODによる授業が進められなくなりますので、そういった場合の学校側の対応についても検討しておくことをお勧めします。
学習に集中しづらい環境になりやすい
BYODでは生徒・児童が個人で所有する端末を利用するため、授業に関係ないアプリなども端末の中にはある状態となります。こうした要素は、どうしても授業や自宅学習に集中しづらい環境を生んでしまいます。
また、インターネットやアプリの活用においても、誤った使用をしてしまう可能性もあるので、学習のほかに、オンライン活用における生徒・児童のリテラシーを正しく教育する必要もあります。
学校・教育分野では「BYAD」という手段もある
従業員が個人の端末を業務で利用する「BYOD」とは別に、学校や教育分野では「BYAD」という手段もあります。BYADとは「Bring Your Assigned Device」の略で、自治体や学校が指定する端末を購入して利用することです。たとえば学校が指定するタブレット端末を全校生徒が購入し、それを学校へ持ち込んで学習に使用します。
BYODとBYADの最大の違いは、「管理のしやすさ」です。学校側が端末を指定するため、必要な設定や管理システムの導入を一斉に行えるのが大きな特徴でしょう。ここではBYODとBYADの比較と、BYADのメリット・デメリットをご紹介します。
BYOD・BYADの比較表
それでは、それぞれのメリットとデメリットを比較してみましょう。
表は横にスクロールします
BYOD | BYAD | |
---|---|---|
意味 | Bring Your Own Device (個人の私物デバイスを学習に活用する利用形態) |
Bring Your Assigned Device (指定されたデバイスを個人が私費で購入して持ち込み、活用する利用形態) |
メリット | ・導入コストが抑えられる ・ICT教育の推進に役立つ |
・全員が同じ端末を使用することによって格差がなくなる ・操作やトラブルの対応が簡素化される |
デメリット | ・セキュリティリスクや紛失・破損時の対応を取り決めておく必要がある ・OSや機種の違いによるトラブル対応が必要 ・学習に集中しづらい状況になりやすい |
・初期費用を学生側が負担しなくてはいけない ・デバイスを購入するための情報を保護者へ周知する必要がある |
BYADのメリット
学校が端末を指定するBYADでは生徒全員が同じ端末を使用するため、環境による格差は発生しません。BYODでは個人が所有する端末を利用するので、OSやデバイスのスペックはさまざまです。そのため、一部生徒の端末がフリーズしたり、トラブルが発生したりするなど、生徒間で操作性や進行に格差が生まれてしまいます。BYADでは、みんなが同じ端末を使用することで、そういった格差がなくなります。
また端末が統一されていることで、操作方法やトラブルへの対処法などを教員が把握しやすいといったメリットもあります。ひとつの機種に対してマニュアルやトラブルシューティングを作れば良いので、教員の負担を軽減できるでしょう。
BYADのデメリット
BYADのデメリットは、購入時にトラブルが発生しやすい点です。デバイスを購入する必要がある旨を保護者へ理解してもらい、スムーズに購入できるようサポートしなくてはいけません。また学生側に購入を任せると、必要な日までに購入することを忘れてしまう、経済的な問題で購入できない、などの理由で期日までに揃わないケースもあります。そのため、教員が購入状況を都度で生徒に確認したり、学校側が一括購入して集金したりするなどの対策が必要でしょう。
BYOD導入時の注意点
デメリットについても見ていきましたが、ここからは、実際にBYODを導入する場合に踏まえておきたい注意点を紹介していきます。
運用ルール・ガイドラインをしっかり策定する
デメリットとしても記載しましたが、導入に際し運用のルール作りは重要です。たとえば、情報はどこまで保護するのかといった点から、業務利用時の端末使用場所の規定といった運用ポリシーを明確に定めておきましょう。フリーWi-Fiの使用可否なども、セキュリティ面に関連する箇所ですので、よく検討しておきたいところです。
また、教育現場においては上記の運用やセキュリティ面のルールを策定することはもちろんですが、授業時のルール、自宅学習におけるルールなどを策定し、児童・生徒にも理解させることが重要です。学習に悪影響を起こさないBYODとなるよう、児童・生徒自身にもしっかりとルールを認知してもらいましょう。
MDMを使ってセキュリティ面の安全を確保する
BYODのデメリットであるセキュリティリスクの高まりを回避するには、MDM(モバイルデバイス管理)の導入もおすすめです。MDMを利用すると、運用ポリシーに合わせた設定を従業員の端末に一括設定することも可能なので、セキュリティ面の安全を確保することができます。
さらに、端末の紛失時も遠隔ロックなどが可能になるため、個人情報漏えいといった点でも安心できます。
もちろん、MDM上で個人的な情報を閲覧しないといった企業側のルール作りもポイントになってきます。企業も従業員も安心してBYODできる環境を構築するためにも、MDMの導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
■MDMで可能な機能例
・ネットワークの設定(Wi-Fi設定・VPN設定)
・アプリのインストールの制限
・アプリの自動配信、アップデート
・Webコンテンツフィルタ設定
・端末紛失時におけるリモートワイプ・リモートロック
弊社のMDM「mobiconnect(モビコネクト)」であれば、端末の紛失対策からVPN接続、自社アプリの配信などさまざまなことが実現できます。上記以外にもさまざまな機能を搭載していますので、企業や教育現場によって異なる課題にもしっかりとお応えします。気になる方はぜひ以下のリンクより、実際の導入事例などをご覧ください!
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まとめ
今回は、新型コロナウイルスの影響から需要の高まるBYODについて詳しく見ていきました。メリットもありますが、実際にBYODを導入するのであればセキュリティ対策は必須です。今回ご紹介した注意すべき点も踏まえて、安心できる環境でのBYODを実現していきましょう。