導入事例
mobiconnectを活用しているお客様の声をご紹介します。
利用目的や環境は多種多様、お客様のデバイス活用には新たな発見があります。
豊後大野市からはじまる、未来の教室【前編】新たな価値を生むICT×郷土愛とは

豊後大野市教育委員会
- 業種
- 学校・教育委員会
- 導入規模
- 100台以上
- OS
- iPadOS
目次:
雄大な自然と脈々と息づく歴史や文化を有し、豊かな感性を育むことができる豊後大野市。それと同時に、GIGAスクール構想に先駆けてICT活用に力を入れるなど、子どもたちの確かなキャリア形成や教職員の働き方改革にも余念がありません。 今回は、豊後大野市教育委員会・下田博教育長とインヴェンティット代表取締役社長・鈴木敦仁の対談を通して、教育におけるICTの意義や、「郷土愛」を育む学びについて紐解きます。
あくまで小道具。目的と手段を見誤らない教育を

「mobiconnect」のアプリ配信機能である「mobiApps」を活用し、子どもたちがより多くのアプリを使えるように管理されている豊後大野市。要望のあったアプリはすぐに精査し、翌日には認可が下りていることもあるというスピード感は類を見ない先進性です。その背景には、子どもたちの未来を見据え、目的と手段を見誤らない方針があります。
鈴木
―豊後大野市では配布しているiPadに「GONちゃん」と名前をつけているとのこと。「Gadget Of Nexus(つながった気のきいた小道具)」の略だそうですが、この名づけというのがすごくユニークな試みだと思います。これは教育長が発案されたそうですね。

下田 氏
―そうですね。学びのための相棒というか、愛犬のようなイメージで愛称をつけられたらと。名前の由来は、教育方針でもある「ヘプタゴン教育」から取りました。豊後大野市のイメージキャラクターも「ヘプタゴン」ですし、子どもたちも愛着を持ってくれているようです。市外の進学校に進んだ子が先生に、「GONちゃんはどこにしまえばいいですか?」と聞いて驚かせたという話も聞きました。

鈴木
―生活の中にきちんと馴染んでいてすばらしいです。以前、授業を見学した際、ICTが単なるツールではなく、学びの手段としてしっかり活用されている様子を何度も見ました。たとえば、上級生が授業で作ったスライドに、低学年の生徒が理解しやすいようルビを振る必要があったときです。普通なら、その資料上でルビをどうやって振るか調べてしまいそうなのに、その生徒さんは手書きで読み方を書いて張り付けていました。それを見て、ハッとしたのを覚えています。
確かに目的は「ルビを振る」ことであり、「きれいにルビを振る」ことではありませんよね。目的と手段をはき違えていない、学びのツールとしてタブレット端末を使いこなしているなと。

下田 氏
―おっしゃるように、iPadをはじめとするデジタルツールは手段であり、学びのための小道具だと考えています。ICTを使って、教育を次のステップに進めることが重要です。
だからこそ、たくさん使ってほしいと思っています。もちろん、リスクを懸念する声も理解できますが、最初から課題ばかりを積み上げていては始まりません。まだ問題は起きていないのだから、まずはやってみることが大事。快適な環境整備やルール作りはしつつ、前に進んでいくべきだと思います。
鈴木
―教育長のポリシーと方針が全体を作っておられるのでしょうね。教育は、やはりどうしても最後に合わせていきがちですが、引っ張り上げていく力強さを感じます。
下田 氏
―2000年から2020年までの変化はすごかった。そう考えると、次の20年の変化はさらに目まぐるしいでしょう。これまでと同じような足並みでは、先陣を切るのはとても無理です。半分の時間で変化が来ると見越して、10年先のフューチャーデザインは常に描くよう、各校の校長には伝えています。格差があればなくす努力はすべきですが、そのためにすべてを止めることはあり得ません。
それに、子どもたち自身はどんどん使って、いつの間にか差はなくなっていくと思います。見ていると案外、友達同士で気兼ねなく教えあっているんです。協働的な学習にも役立っています。
脈々と続く歴史とICT教育によって育まれる郷土愛
豊後大野市の総人口は約3.3万人。そう遠くない未来には、2万人を割ると言われているそうです。若年層の地元離れは地方において課題となっていますが、豊後大野市の子どもたちには強い「郷土愛」が芽生えています。
鈴木
―もう1つ強く印象に残っている授業があります。先日、YouTuberの平岡雄太さんがiPad活用の進んだ学校を取材する動画撮影に同行し、「mobiconnect」を導入している菅尾小学校の授業を見学しました。動画の中では、教育委員会との連携により実現した自由度の高い環境や都市部の私立を思わせる先進的な取り組みをされていることが取り上げられていましたが、中でも「水霊石」について学んだ総合の授業が素晴らしくて。
この「水霊石」は動いたら菅尾磨崖仏下の集落の一帯が洪水に襲われるという伝承のある石だそうですが、ご担当の釘宮泰代先生はこの「水霊石」というテーマで子どもたちに音楽を作らせていました。最初はiPadを使ったSTEAM教育の一環として見ていましたが、そのうちGONちゃんを使って地域の防災の伝承を学んでいるのだと気づいて。iPadも音楽もその手段でしかなかったんです。
東京で過ごしていると、こういう視点が抜け落ちるなと感じます。住居の選び方も、不動産的価値など、そのときどきの理由がほとんど。伝承するもの自体も少なければ、そもそも地域のものを伝承するという概念もない人の方が多いと思います。あの授業を見て、教育の本質のようなものに気づかされました。こういった文化や歴史を学ばせることは、郷土愛にもつながりますよね。

下田 氏
―そうですね。義務教育を受ける中で、地域の良さを今まで以上に知ることで、ふるさとのよさや愛情を感じてくれたらと思い、近年は郷土学に力を入れています。
これは以前、大分合同新聞に載っていた記事ですが、豊後大野市について「何も紹介することはない」と言った年配の方の言葉を聞いていたお孫さんが「そんなことはないよ。こんないいところがある」と胸を張って答えたのだそうで。これは、豊後大野市の歴史や文化、芸能を子どもたちが学んだ結果だと思っています。
鈴木
―伝統芸能も取り入れているのですか。
下田 氏
―はい。豊後大野市には国指定重要無形民俗文化財の御嶽神楽や、和太鼓などが芸能として根付いていますが、こういった伝統を総合的な学習として年間を通して学んでいるんです。子どもたちは高い興味関心を持って取り組んでくれていますよ。こういった時間を経ることで、たとえ大人になって市外や県外に出たとしても、自分の故郷を思い返す瞬間がきっとあると思います。
鈴木
―そういった若い方に戻ってきてほしいですよね。
下田 氏
―もちろん、その期待もありますね。地方の過疎化は年々深刻化していますが、やはりまちづくりに必要なのは若いエネルギーです。外からの情報が多くなった分、地元を出て挑戦してみたくなる気持ちは理解できますが、いつの日か住み慣れたふるさとへの愛着を思い出して帰ってきてくれたら嬉しいですし、そのための環境を整えなければならないと思います。時間はかかるかもしれませんが、着々と土壌は育っているのではないかと。
ICTを活用した学びが、地域の文化や歴史と結びつき、豊後大野市ならではの価値が生まれています。広大な自然と豊かな文化、そして最先端のICT教育のもとで、子どもたちは確かなアイデンティティを育んでいるのです。こうしたハイブリッドな学びの形は、これからの教育の可能性を感じさせます。
後編では、学校と企業それぞれの教育の共通点や、ICTがもたらす未来について語っていただきます。

( 取材日:2025年1月)
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