世界で活躍する人材育成。 生徒の自発性を尊重し、習熟度に合わせたICT環境を構築!

慶進中学校・高等学校

業種
学校・教育委員会
導入規模
500台以上
OS
iPadOS

mobiconnectで実現したこと

  1. Point01

    society5.0を見すえた10か年到達目標の一角にICTスキルを設定

  2. Point02

    小テストの実施や採点、進捗把握まで普段の学習に密着

  3. Point03

    リスク管理体制を整備し主体的で自由な学びを下支え

中高一貫校である慶進中学校・高等学校は、2019年度入学生から一人1台のiPad端末を導入しました。同校ではsociety5.0の到来を見越し、全く新しい社会体制で活躍するために必要な能力の一つに「ICTスキル」を設定。実社会で有用な使い方を身に着けられるよう、一般的な学習の枠に捉われない独自の使用規程を定め、主体的に学ぶためのICT教育に力を入れています。生徒から申請のあったツールやアプリについては柔軟に使用を許可し、応用力の向上を支援。その環境で生徒たちを守っているのが、2023年4月に導入した「Cisco Umbrella」です。

society5.0を見すえた10か年到達目標の一角にICTスキルを設定

山口県宇部市にある慶進中学校・高等学校は、男女共学の私立の中高一貫校です。建学の精神「至誠」を学校生活の中心に据え、すべての教育活動が「強い志」「高い人間力」「高い学力」の3つを育成することを目的としています。

2020年には時代に合った形でその3つを育成するため、生徒に身に着けさせたい12の能力「コンピテンシー12」をまとめた10か年目標を策定しました。「自己肯定感」「創造力」「自己分析力」などと並び、「ICTスキル」もコンピテンシーに取り入れられています。

それに先立ち2018年に「KS ICT EDUCATION POLICY(慶進中学校・高等学校ICT教育の方針:以下ICTポリシー)」を策定。さらに校内に教員用と生徒用に分けた二重のWi-Fi回線を整備し、2019年度入学生から一人1台のiPadを各自購入という形で導入しました。「iPad等デバイスの使用規則」で使用方法を定めた上で、授業にも取り入れています。

世界で活躍する有為な人材を育成するために

同校のICT教育の特徴は、大きく変化する社会の中で、多様なツールの根本的概念を捉えて的確に使いこなすためのスキル習得に重きを置いている点です。ICTポリシーでは、「世界で活躍するためのICT教育」「主体的に学ぶためのICT教育」「相互理解のためのICT教育」の3つを柱に据えています。これに則り、学習に特化したアプリなどに用途を制限せず、大学や社会で実際に使用されているツールを使いこなせるよう指導しています。

同校のICT推進室室長 田中祐輔教諭は、次のように話します。

田中 教諭
― 新しい試みはとかく批判されやすいものですが、楽しく参加できる形にすれば生徒にも教員にも積極的に取り組んでもらいやすいと感じています。そういう狙いから、端末も生徒たちに人気のあるiPadを選びました

iPadはクリエイティブ系の機能との相性も良く、アプリを使って自主的に動画を制作する生徒もいます。「YouTube用の動画を作りたい」という声を受け、同校ではプロ仕様の高度な撮影や編集の機材も導入しました。希望する生徒が集まり「ICTラボ」というグループを発足し、動画の制作を含むICTの多様な活用に取り組んでいます。

終業式などの学校行事の動画や画像などは学内専用のSNSアプリを使って配信しています。学校の許可を得て、学園祭への来場を呼び掛ける動画を制作し、外部にも公開しました。

田中 教諭
― ICTを使って教員がすべてを教える形には限界があります。自分が知りたいことを学校や友人と協力し、実践しながら主体的に学び、知識そのものではなく『学ぶための力』を身に着けさせてあげたい

小テストの実施や採点、進捗把握まで普段の学習に密着

iPad端末は毎日生徒がそれぞれ自宅に持ち帰り、教員からの一括連絡や個別メッセージのやり取りにも使用しています。教員からの連絡漏れが減り、生徒の個別相談も気軽に受けられるようになったことで、校内のコミュニケーションが密になりました。

当初はICTに興味がある先生とそうでない先生の間で導入の度合いに大きな差がありましたが、コロナ禍を受けて優れた学習アプリが多数開発され、ほぼ全員が同じ水準でICTを使いこなせるようになってきました。全員が利用するアプリのインストールは、MDMのmobiconnectの一括配信機能を活用しています。

年齢層の高い教員の中にはまだ使いこなせていない人もいますが、教員の平均年齢が比較的若いこともあり、基本的に導入自体にはどの教員も前向きです。

授業ではテーマに関連する映像を見せながら解説したり、小テストを端末上で実施したり、自主学習の進捗状況を記録・把握したりしています。また中高一貫校である同校では受験がないため、中学校卒業時に修了論文を提出しますが、その調べ学習やまとめにもiPadが大きく貢献しています。もちろん高校生も、調べ学習に常に端末を活用しています。

プリント配布の代わりにメッセージを配信するため、ペーパーレス化もぐっと進みました。授業中のノートをiPadで取る生徒もいて、既に端末が「文具」として機能しています。

田中 教諭
― 導入時点ではとにかくICTを活用して自分のやりたいことをできる能力を身に着けてもらうことを目的としており、学力向上への活用はあまり考えていませんでした。しかしコロナ禍以降はアプリ開発が劇的に進んだこともあり、学習への応用が一気に進みました。理解が必要な部分は教員が指導し、記憶を定着させる場面でICTを活用すれば効率的に学力向上が図れます。テストの採点や集計に時間がかからなくなったので、余裕ができた教員の時間を授業内容の充実に充てられるようにもなりました

管理フローが校内で完結できるようになり、アクセスも改善

大きな学びをもたらす半面、使い方を誤れば危険な側面をもつインターネットにおいて安全性を確保するのがCisco Umbrellaです。同校ではCisco Umbrellaの導入以前、他社のフィルタリングシステムを利用していました。そのシステムの販売終了が決まり別のシステムを検討していた際、端末導入時から信頼して任せているシステムの販売業者からこのシステムを勧められました。すでに同システムを導入している学校の知人からも話を聞き、導入を決めたそうです。

変更直後はそれまで見られていた情報が見られなくなったなど若干の混乱がありましたが、生徒も教員もすぐに新環境に慣れたといいます。

田中 教諭
― 私は情報が専門ではなく社会科の教員で、システムに関する詳しい知識がありません。しかし実際に使ってみると、例えば『今だけこの子のフィルターを緩めたい』といった際の個別設定が自分でできるようになりました。それまでは都度業者の方に電話で依頼していたので、管理がぐっと楽になりましたね

またCisco UmbrellaはこれまでのIPアドレスを参照する方式のフィルタリングシステムと異なり、その一段階手前のdns(ドメインネームサーバー)へのアクセス時点で、ドメインに問題がないか判断する方式を採用しています。そのためか、導入以前に時おり起こっていた授業中のアクセス遅延などの問題がほぼなくなりました。オンライン授業でも生徒が1~2名ログインできないという事態が時おり発生していたそうですが、そうした事態も解消されました。

リスク管理体制を整備し主体的で自由な学びを下支え

田中 教諭
― 動画投稿サイトの学内での視聴も、高校生には特に制限していません。例えば趣味で釣りの動画を閲覧している生徒が、将来釣り会社の社長になるかもしれません。一見遊びに見えるものでもその生徒にとっては学びに繋がるかもしれないので、個別最適化を目指しています。もちろんルールを守ることが前提ですが、極端なことを言えば、人が死んだり傷ついたりしない限りやりたいことをやらせてあげたいんです

Cisco Umbrellaのフィルタリングで安全性を確保することで、そうした個別最適化が可能となりました。発達段階の異なる中学生と高校生でも、フィルタリングのレベルを変えています。

安全性を確保しながら新たなチャレンジをしやすい環境に支えられ、生徒同士がドキュメントを共有してその場でデータをやり取りしたり、おすすめのツール情報を共有したりすることで生徒たち自身が使い方を進化させています。教員が新しいツールや使い方を生徒から教えられるケースも珍しくなくなりました。

言葉遣いや文面の受け取り方などといった、ネット上のコミュニケーションも指導。例えば同校では使用規程で、校内での写真や動画の撮影を基本的に禁止しています。知らない間に自分が撮影されてネット上に公開されるようなことがあれば、学校が生徒にとって安心できる場所ではなくなってしまうためです。無許可で校内で撮影をしたり、それをSNSにアップするなど使用規程に違反した生徒は、大きな問題が生じていなくても処分の対象とします。ネットリテラシーやモラルをしっかりと身に着けることで、社会に出て何かをしようと思ったときに、ICTを武器にやりたいことを実現できる人に成長してくれることを期待しているためです。

安全性を確保しながら生徒の将来に繋がる意欲を後押し

同校におけるICT教育の次の課題は、ネクストステージをどこに設定するかという点です。学習ログなども含むプラットフォームが定着し、教員のスキルも向上してきている中で、さらに生徒たちに身に着けさせるべき能力や、必要とされるICT教育は何なのか。ICTを使って何をすれば面白いのか。Society5.0の形が見えない中、生徒と教員が全員で模索している状況だといいます。

田中 教諭
― 2022年度卒業生のうち、情報系の大学に進学した学生から今年、在校生に向けてChatGPTの使い方に関する講義をしたいという申し出がありました。彼の世代はiPadを一人1台導入していなかったのですが、特に『やりたい』という意欲がある生徒は、将来ここで学んだ技術で食べていける可能性もある。Cisco Umbrellaで生徒の安全を確保することで、そうした意欲を後押しして将来に繋げてあげたい

( 取材日:2023年6月 )