国際教育、英語教育、ICT教育による全人教育が特色。生徒がiPadを使いこなすための「ルールを作らないというルール」とは?

富山国際大学付属高等学校

業種
学校・教育委員会
導入規模
100台以上
OS
iPadOS

mobiconnectで実現したこと

  1. Point01

    手作業で進めていたiPad約300台のキッティングから解放!

  2. Point02

    スピーディーな対応で入学式に間に合うよう導入が実現

  3. Point03

    誠実なマニュアルは「1人情シス」状態でも安心

目次:

富山県富山市にある男女共学の富山国際大学付属高等学校。国際教育と英語教育に力を入れ、特に学校の特徴がよく現れている「国際英語コース」では1年間の留学を認めています。また10年以上も前からクラウドを導入し、国内でもいち早くICT教育に着目している有数のDX活用校でもあるのです。

「21世紀型学力」を育むべく全生徒にiPadを導入した同校は、手動だったキッティング(初期設定)の負担を「mobiconnect(モビコネクト)」で実質ゼロにしました。苦労から解放されたエピソードやiPadの活用方法について橋本知彦先生にうかがいます。

国際教育や英語教育を看板に、国内でも早期からICT教育に注力

現代にふさわしい人材を輩出するため、生徒の国際化や情報化に力を注ぐ富山国際大学付属高等学校。初めに教育方針や、橋本先生が顧問を務めるメディア・テクノロジー部の活動についてうかがいました。

橋本 先生

―本校は1964年に富山女子短期大学付属高等学校として開校しました。1990年に系列の富山国際大学が誕生するとともに共学化し、現在の富山国際大学付属高等学校として新たなスタートを切っています。現在の生徒数はおよそ850人で、主に英語を学びたいと希望する県内の中学生から選ばれている学校です。

校名の通り国際教育や英語教育に力を入れており、中でも「国際英語コース」が特徴的でしょうか。在籍する生徒は希望制で1年間の留学が可能であり、2024年度も約20人がカナダやアメリカなどの英語圏の他、ドイツやフランスといった欧州の国々にも渡りました。

さらに国際教育のみならず、本校は「21世紀型学力」を育むべくICT教育にも注力しています。富山県や北陸エリアの中でもかなり早期に導入し、実際にクラウドは13年前から活用し始めました。聞くところによると、全国の教育機関の中でも1、2番目の早さのようですね。10年以上にわたり生徒にデジタルやITテクノロジーを教えてきて培った知見は、教育界をリードしていく上でとても重要なものだと感じています。

部活動では、手前味噌ながら私が顧問を務めるメディア・テクノロジー部が頑張っていて。実際に慶応義塾大学の環境情報学部が主催する「データビジネス創造コンテスト」に過去3回出場し、大学生や大学院生と同じ土俵で競い合った結果、いずれも最優秀賞・グランプリを獲得しています。

たとえば2回目の参加時には「和食文化による価値創造」をテーマに、大手グルメレビューサイトから提供されたビッグデータを解析しました。人気和食店1000店舗分のデータと、それにひもづく1年分のレビューデータをテキストマイニング(テキストデータを解析して役に立つ情報を得る手法)し、生徒たちが導き出したのは「和食店の魅力は大将のうんちくである」というもの。その発見を基に巻物のレシピを開発したり、3Dプリンターで「和食に向いたお弁当箱」を製作したりして、プレゼンテーションまで行いました。

コンテストを通じて主催者の教授とも親しくなり、先方の勉強会にも参加するように。そんな経験もあってか、6年連続で慶応義塾大学環境情報学部環境に進学する部員も輩出しています。

一方、学校全体で見ると、やはり英語系の学部への進学が多数を占めます。文系志向は強いものの、ICT教育の浸透で情報系の学部を選ぶ生徒も増えてきました。ちなみに、そのうちの約7割が女子生徒です。

生徒が自然体でiPadを使えるよう、「ルール」を設けず

同校では早くからクラウドを導入するなどITを駆使してきました。そしてiPadを導入するにあたり、学校側で細かいルールを決めないことを選択。その理由や日々の活用方法をお聞きします。

橋本 先生

―iPadを導入する前、授業で調べものをする際は電子辞書を使っていました。しかし、あくまでも辞書でしかなく、本校が目指す21世紀型の教育を実現するには限界がありました。そこで最初に第1世代のiPadの検討をしてみたのですが、当時は動作も遅く使えるアプリも少なかったため、わずか3日で導入を断念したことを覚えています。

その頃、アメリカの教育現場ではiPod touchの活用例が出てくるようになりました。詳細を調べきる間もなく日本ではiPad miniが発売され、電子辞書とほぼ同料金だったこともあり「これだ!」と思いました。

そこで当時の校長と共にクラスを限定してテストを行ったところ、とてもいい結果が得られて。翌年度から第1学年の全生徒に端末を購入してもらうことになりました。やがてiPad miniがiPadになり、全校生徒が使うようになりましたが、いずれもスムーズに切り替わっています。

円滑に進んだのは、やはりクラウドを導入していたからでしょう。本校ではすでに生徒と教員がメールで連絡を取り合ったり、学校からの情報を一斉配信したりするなどITのメリットを享受していました。だからiPad導入への理解もあったと認識しています。

もちろん、不安を抱えていた教員や保護者もいたと思います。メディア・テクノロジー部が慶応義塾大学のコンテストに出場したのは、そんな心配を払拭する意味もありました。日頃からiPadを使う生徒たちが結果を出してくれたこともあり、選択は誤っていないと自信を持って言えますね。

また、よく他校の先生方に驚かれますが、本校ではiPadの使い方に細かい制限を設けていません。逆にいうと「ルールを作らないというルール」を当初から定めていました。

何よりも重要なのは、生徒が自分の手足のようにiPadを使いこなすことです。「このアプリは使用不可」「あのYouTube番組なら見ていい」などと押し付けると、積極的に触れようとする意欲が消えてしまうかもしれません。授業中も教員の指示で端末を取り出すのではなく、常に机の上に置き、必要に応じて自由に使えるスタイルを選びました。

ヒントになったのは、英語の授業で絵本を翻訳していた生徒たちです。放課後になると各自が携帯電話で「どう訳した?」「この表現どう思う?」などと相談し合っており、学習効率が格段に上がる様子に感心しました。教室でも同様の状況を作り出したいと考え、「ルールを作らないというルール」が生まれたわけです。

iPad導入によってさまざまなよい影響がありましたが、その中で最も大きな変化は「生徒があきらめなくなった」ことです。これまでは家で宿題が解けない時、学校で質問する以外にすべはありませんでした。でもiPadがある今は教員にも友人にも気軽に質問できる環境が整っています。私にも、特に定期考査の前には「ここがわかりません」というメールが山ほど届きますね。大変なことや課題もありつつですが、生徒たちの学習の可能性が広がったことにとても満足しています。

なお、事前に多くの学習アプリをインストールしておきますが、生徒からリクエストがあれば検討の上で追加します。今までで特に良かったのは「アイビスペイント」というイラスト用のアプリですね。美術の教員以外が生徒のクリエイティビティを知る機会はなかなかありませんが、創作系のアプリを導入したことによって、文化祭のポスターなどがデジタルに作られたり、作品がデジタルな場で発表されたりするようになりました。

あとはタイピングを苦手とする生徒が多いため、ゲームフィケーションの要素を取り入れた”早打ち選手権”を開催しています。個人のタイムも公開し、クラス対抗のイベントも企画したりして、なかなか盛り上がっていますね。一方、学校生活で主に利用しているのはGoogleの各サービスです。

もちろんiPadで教員の指導法も変わりました。私の場合、録画した授業をYouTubeにアップしており、内容をうまく理解できなかった生徒や欠席した子が繰り返し視聴できるようにしています。保護者からも「子どもと一緒に家で見ています」などと声をかけられますが、学びが授業で終わるのではなく、その後も続く環境が整いました。教員同士も情報を共有しやすくなり、指導の引き継ぎや職員会議も効率化しています。

総合的に本校では、アナログをデジタルに変えることを目的とせず、デジタルでしかできない新しいことに挑戦し続けるという点を大切にしています。そして従来の業務負担が軽減された分、よりクリエイティブな指導が可能になり、そこから何が生まれるのかにも注目です。保護者の反応も変わり、本校を選んだ理由として「ICT教育の充実」を挙げる人も増えているように感じます。

「mobiconnect」で300台の手動キッティングから解放

「ギネスに申請すれば良かった」と話すほど、橋本先生は年度末になると新入生のiPadのキッティングに忙殺されるように。そんな“修羅場”を救ったのが「mobiconnect」です。

橋本 先生

―生徒が使うiPadは私ともう一人の教員で管理しています。新入生に端末を購入してもらい、入学式のときに渡して初回の授業から使えるよう準備させるんです。少子化の時代ですが、おかげさまで毎年約300人を迎えられています。

しかし「mobiconnect」に出合う前の約10年間、私たち2人とって入学式前は“修羅場”でした。新入生の数だけ端末を取り寄せたら会議室を借り切り、1つずつ開封して電源を入れ、Apple IDを発行したらバッテリー残量を気にしつつアプリをインストール……といった作業を300台ひらすら繰り返したわけです。ダウンロードが少しでも速くなるよう会議室にいくつかの無線LANアンテナを用意しましたが、それでも足りませんでした。

加えて、本校を併願で受けた子の動向は直前までわかりません。結果が出ると「4日後の入学予備登校日までに150台を用意してください」といった具合に依頼が入り、2人で深夜まで作業したことも多々ありました。さらに卒業生のアカウントも削除しなければならず、他の教員に手伝ってもらうにも年度末で忙しいため声はかけられませんでした。しかし、そもそも私たち2人にも教育者としての本業があります。今は「iPadのセットアップ記録をギネスに申請すれば良かった」なんて笑い話にできますが、当時は本当にてんてこまいでした。

実はそのときも他社の無料MDM(モバイルデバイス管理)を使っていたんです。それにもかかわらず、この“修羅場”が改善されないまま毎年繰り返していました。しかもそのシステムの無料期間も終了するとわかり、必死に他のMDMサービスを探す中で「mobiconnect」に行きついたんです。

初めてのシステムのため多少の不安はありましたが「新入生にすぐ使わせたい」という校内の要望を受け、さっそく問い合わせました。「来週にでも導入したい」という無理な依頼でしたが、数日後には東京から担当者が駆けつけてくれましたね。

振り返ると、採用の決め手はまず価格面でした。他校では1台につき数万円をかけて業者に端末のキッティングを任せているところも多いようなのですが、それなのに入学式に間に合わず、2学期に入ってようやく届いたという例も聞いています。

対して「mobiconnect」は低価格で導入もスピーディです。提供会社であるインヴェンティットの実績も文教分野ではナンバーワンであり、校内の承認もすぐに下りました。機能面も、もちろん申し分ありません。新入生の端末を一斉に設定してくれるので、Apple IDの入力や初期アプリのダウンロードも自動化され、10年にわたる私たち2人の作業もほぼゼロになりました。今では箱に入った真新しいiPadをキーボードや資料と共に新入生の机に置くだけです。

ICT初心者も安心なインヴェンティットのマニュアルの誠実さ

AIの登場でiPadは知識を得るためのツールから“相談役”に変化。レポートをチェックさせ自身の考えを昇華させるなど高度な使い方が始まっています。そして橋本先生は、インヴェンティットにも相談役としての誠実さを見いだしてくださいました。

橋本 先生

―インヴェンティットは学校現場をよく理解しています。マニュアルを開いても各教育機関との間で改良を重ねてきた様子が見て取れ、ITの知識が少ない教員がいることを前提につまずきやすい点やポイントが丁寧に説明されているなと。私も生徒向けの説明書を作る立場なので苦労がよくわかりますが、地道な改善を重ねているのが伝わり、信頼できる会社だと感じます。

GIGAスクール構想のもと、全国のほぼ全ての学校がICT教育に取り組みました。達成度はそれぞれですが、今後は未来を見据えられる学校が多く生き残るでしょう。本校のオープンハイスクールを通じてもAIや最新技術に関心を寄せる保護者が多いことがわかり、教育現場の方向性が問われています。有用性を調べることなくAIを禁止していては、選ばれる機会を逃すのではと思います。

学校現場のICT担当者は、いわば「1人情シス」の状態であらゆる責任を負っています。ネットの通信速度が落ちれば不満を言われ、誰にも相談できないまま対応しなければなりませんよね。だからこそ「mobiconnect」のようなシステムで課題を解決する発想が重要です。本校でも2人の教員が年度末の作業から解放され、今まで以上に新学期の準備に時間を割けるようになりました。

教育現場は今、大きな転換期にあります。デジタルを活用せず、アナログな体制を続けていては子どもの可能性にふたをすることにつながるのではないでしょうか。教員が“古き良き”にとどまることが子どもの未来にとって本当に良いことなのか、常に考える必要があると感じています。

( 取材日:2024年8月)


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